今年の夏は節電と電力消費のピークシフトが、企業と国民に与えられたキーワードとなっています。これは大切なテーマですが、直感的に考え出された対策には間違いもあるようです。

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多くのビルでは省エネのために一部のエレベータを運転休止しています。この間引き運転の効果に疑問が呈されています。

この対策では休止しているエレベータの消費電力は減少しますが、利用者の数が変わらないとすると、動いているエレベータの稼働率が上昇するので、こちらの消費電力は増加します。

同じカゴに客が相乗りした場合の消費電力減少は期待できますが、どの程度の効果があるのでしょうか?

この問題について財団法人電力中央研究所が実際のビルで実証試験をしました。

その結果、間引き運転しても電力使用量に大きな変化は見られませんでした。 その一方でエレベータの待ち時間が大幅に増大するという結果が得られました。

この現象は利用率の高いシステムで処理能力を落とすと、待ち時間が指数関数的に増大するという「待ち行列理論」で説明される現象です。

すなわちエレベータの間引き運転は節電効果が少ないのに待ち時間を大きく増加させるという、国民経済的には逆効果となる間違った対策だと言えます。

エレベータの待ち時間に費やされる時間が増加することは、貴重な労働時間がロスタイムに変わることを意味します。

全国民レベルでは相当量の労働時間が失われることになり、誰もが気付かない間に、これがGDPを大きく毀損する結果を招きます。

このような問題に政府は目を瞑っていていいものか、疑問を感じます。

(電力中央研究所報告:http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/leaflet/R08004.pdf

Category: 社長ブログ
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