緊急事態宣言が全国で解除され、新型コロナウイルス感染症は一旦終息しました。しかし感染症は簡単には収まらないものですから、今冬気温が下がれば再び第二波が襲来する可能性があります。さらに自粛ムードやソーシャルディスタンスの影響が営業の足かせとなり、消費支出の大幅な伸びは期待できません。しかも、消費税増税の影響で昨年10から12月の第三四半期に、GDPマイナス7%の記録的な景気悪化を引きずったままです。このようにどこにも明るい話題は無く、年内は木枯らしの吹きすさぶ、厳しい状況が続きそうです。

 

しかし来年になると見えてくる景色がガラッと変わる可能性が高いと考えられます。それは

①テレワークやオンライン会議の浸透により業務効率化が進展し、企業業績が改善に向かう。

➁オンライン化で住宅やオフィスの立地が都心から郊外に移り、日本列島の効率性が改善する。

③5Gの進展により、自動運転車の開発やバーチャル会議、遠隔診療などの新技術が開花する。

④海外に生産拠点を置いてきたいわゆる空洞化現象が逆回転して、国内への回帰が本格化する。

➄原油価格の低迷が長期化し、日本の貿易収支黒字が拡大するので、良性のデフレが進展する。

⑥先進国中最低の致死率となった日本に世界から注目されて、日本への観光需要が急回復する。

全てが実現するとは限りませんが、新型コロナは日本に多くのメリットをもたらしそうです。

 

戦後の歴史を振り返ると、日本が大きく成長した1960年から1990年の30年間、バブル経済崩壊後の1990年から2020年までの30年間、振り子は大きく端から端に振れました。そして2020年からもう一度振り子が日本を成長させる方向に振れるために、今回の新型コロナはそのきっかけを作ったかもしれません。「災いを転じて福となす」ことを世界に示して、世界から注目される日本になりたいものだと思います。

 

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新型コロナの影響で、今は国内の経済活動が停止状態となっています。終息するには1年以上かかるという悲観的な見方が多くなってきました。終息時期については、まだ予想ができない状況です。しかし、経済活動の再開は意外に早いのではないか、というのが筆者の個人的見解です。

第一は気温です。マサチューセッツ工科大学の分析によると、平均気温が18℃を超える国では感染の発生が全体の5%以下に留まるそうです。日本は5月に入ると平均気温が18℃を超えるので、感染の自然減が期待できるようになります。第二は治療薬です。アビガンはこれまでの治験で特効薬としての効果が見られています。催奇性の副作用から未承認薬となっていますが、緊急事態として治験による利用を増やしていけば、新型コロナは治る病気に変わります。もともと致死率はそれほど高く無いので、治る病気となれば感染拡大を恐れる必要は無くなります。

恐れる必要があるのは、これまでに破壊された経済活動が元の状態に戻るかどうかです。政府の緊急経済対策に盛り込まれている予算案を見ると、最大の費目は一人に10万円の個人向け給付金です。次に大きいのは一社200万円もしくは100万円の企業向け給付金です。これらは今困っている人を救うための措置です。アフターコロナの日本経済を活性化させるための費目で大きいものは、旅行や飲食、コンサートへの割引クーポン券の配布です。これ以外は概ね小粒の経済対策です。旅行会社や飲食店、イベント会社に大きな影響が出ていることは間違いありませんが、この対策だけで日本経済がⅤ字回復すると考えることには無理があります。

新型コロナが問題となる前の、2019年10月から12月の実質GDPは、前年同期比マイナス7%の悲惨な状況でした。今経済活動が再開されても、戻る先は消費税率10%でマイナス成長の日本です。自粛疲れの反動で一時的に盛り上がることはあっても、マイナス成長から脱することは難しいでしょう。

日本経済は再び成長軌道に乗せるには、消費税を一時的に0%にすることが極めて効果的な政策手段です。年収300万円の人ならこれで、年間30万円近い減税効果が見込まれます。それに必要な予算は約20兆円です。これに対してもう一度、個人給付金10万円を配る方法も取りざたされますが、これには再度12兆円の予算が必要です。そしてこれはもう一度で十分かどうかはわかりません。新型コロナよりも怖いものは、中身の無い経済対策予算かもしれません。

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新型コロナウイルスの影響で、最近の話題が見えにくくなりがちですが、次世代通信といわれてきた5G通信が、いよいよ始まりました。NTTドコモが3月25日から、au(KDDI)が26日から、ソフトバンクが27日から5Gサービスの提供を始めました。5Gとは第5世代(5th Generation)通信規格の略ですが、過去の通信規格を大雑把に振り返ってみましょう。

1Gは1985年に登場した大型羊羹形状の携帯電話で、一部のビジネスマンが持ち歩きました。

2Gは1993年登場した手のひらに収まる小型携帯で、ここから携帯電話が普及を始めました。

3Gは2001年にFOMAという名称で登場し、iモード通信や写メールが一世を風靡しました。

4Gは2012年から始まる現在の携帯規格で、当時iPhone4がスマホブームに火を付けました。

振り返ると、1Gは古い体質の電電公社から新しい体質のドコモが誕生するきっかけになりました。2Gでは鳴かず飛ばずの第二電電が携帯キャリアとして大きく飛躍するきっかけをつかみました。3Gの開始をつかんで成長のきっかけにしたのは言わずと知れたソフトバンクの孫社長です。そして4Gは故スティーブジョブズがアップルを世界企業に躍進させました。このように新しい「G」は大きなイノベーションのきっかけになってきました。

5Gは映画が数秒でダウンロードできるとか、自動運転に不可欠などと言われていますが、本当のイノベーションは何か、まだ誰にもわかりません。これをきっかけにチャンスをつかんだ人、又は企業が次世代のリーダーシップをつかむであろうことは、過去の歴史が証明しています。

高速大容量通信、遅延が発生しない、多数の同時接続ができる、この三つの大きな特長を生かした次世代のサービスは何になるのか。これを思いついた人が次世代の成功者になれます。

幸いなことに、今はクラウドファンディングというしくみがかなり認知されてきました。誰もが納得できるビジネスモデルを構築できれば、シリコンバレーにいなくても多額のファンドを集めることができます。あなたも5Gで新しいビジネスモデルを考えてみませんか。

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新型コロナウイルス(COVID19)の感染が社会問題となり、経済にも大きなダメージを与えつつあります。製造業、小売業、飲食業、観光業など、幅広い分野での経済活動が低下することは避けられない状況となっています。しかし、すべてを悲観的に捉えるのではなく、あえてここでは今回の問題をプラスに転換することができないか考えてみました。

感染拡大防止のために、人が集まる集会への参加は自粛が呼びかけられていますが、人が集まるオフィスの出勤や通勤にも同じ問題が生じます。この問題はサテライトオフィスの仕組みが整っていれば解決できるもので、既に取り組んでいる企業の事例もマスコミ等で取り上げられています。実際今のオフィス業務の多くはパソコン上で行っているものが多いので、データ共有の仕組みさえ出来ていれば、自宅のパソコンで仕事を進めることは、それほど難しいことでは無くなっています。また今はウェブ会議のアプリは既にいくつも提供されていますから、各自がスマホを持てばいつでも遠隔会議を開催することは難しいものではありません。在宅勤務やウェブ会議を行うための技術的な障壁はすでに無くなっており、残る問題は経営者や社員の意識改革だけです。

日本は高度成長の時代が終わった後も働き方を変えることができず、グローバル経済化の中で成長の機会を見つけられないまま30年が過ぎました。そのあげく政府から強要された働き方改革によって、多くの企業は右往左往しています。そのような状況の中サテライトオフィスや在宅勤務、ウェブ会議などのしくみの導入は、少ない人手と時間でより多くのものを生み出す、まさに生産性改革の基礎となるものです。

今回の新型コロナウイルスの問題で、多くの企業が在宅勤務やウェブ会議を進展させれば、その後には生産性向上という、大きな収穫が得られることになります。しかし、サテライトオフィスや在宅勤務の導入には、技術だけでなく社員や顧客との信頼関係が重要となります。これについては、日本企業が長年築いてきた社員との信頼関係が、今こそものを言うときです。そして、在宅勤務やウェブ会議の導入は、日本が再び成長軌道を取り戻すきっかけになるかもしれません。

新型コロナウイルスは、その対応次第で将来は吉にも凶にもなる、日本人の実力を測る試金石です。あまり悲観的にならずに、正しく前を向いて行動したいものだと思います。

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現在国会で審議されている今年度予算の重点は「生産性革命」です。日本では若者の人口減少による求人難に加え、働き方改革で労働時間が短縮されるため、中小企業は厳しい状況にさらされています。この難局を乗り越えるには、一人の人間が作り出す生産物を、同じ時間でより多く生産することが必須となり、政府はこれを今年度予算でバックアップすることとしています。

 

問題となるのは政府の施策の具体的内容が、中小企業や個人事業者まで届いていないことです。政府の経済政策は大きく分けて、公共事業への支出、日銀の金融政策、経産省による補助金ですが、中小規模事業者向け補助金は国内に企業数が多い割に活用されていないのが実態です。その理由は各企業が不要と考えているのではなく、施策の存在そのものを知らない企業が多いのではないかと思われます。あるいは公募開始後の募集期間が短いので、応募するための準備が間に合わない、といった理由もあるかもしれません。

 

来年度予算案では中業企業向け施策は「生産性革命推進事業」として、従来からの補助金制度を一体的にまとめられています。①ものづくり補助金、②持続化補助金、③IT導入補助金の3本柱となっています。想定される用途は①は新製品向け設備投資、②は販路開拓のための新たな取組み、③は社内のサーバーシステム構築や販売管理システムの導入、ECサイトの構築、などが主な対象となっています。下記のウェブサイトを参照して今から準備を進めておけば、国会の予算案通過後まもなく始まる、各種補助金事業の公募にも余裕をもって応募できるでしょう。

(URL:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/2019/191226yosan01.pdf

 

国としてはこれらの施策を多くの企業が活用して生産性向上が達成され、少ない人数でもこれまで以上の生産物が生み出されることを期待しています。それによりGDPが拡大し、日本経済が活性化して景気が良くなれば、施策の成果が得られたことになります。したがって、国の補助金に対するスタンスは「金の無い企業にくれてやる」というものではなく「より多くの企業に活用してもらいたい」というものです。国からお金をもらうことに、何ら違和感を持つ必要はありません。より多くの企業が補助金を活用して生産性向上を達成し、自社の利益拡大に役立てることが、社会に役立つ大切なことだと思います。

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2019年12月7日(土)に、一般社団法人・愛知インバウンド協会主催によるジョブフェアが、ベトナム・ハノイで開催されたので、主催者の一員として参加しました。

これまでも技能実習生として多くの外国人労働者が日本に来ていますが、これは3年間の期限付きで帰国することが条件となっています。それに対して、これから始まる特定技能者の受け入れ制度は、長期間日本に滞在することを視野に、企業の正社員としての受け入れも可能とするものです。そうなると、これまでのような人材紹介業者任せではなく、企業自ら外国に足を運んで、優秀な人材を獲得する時代がくるのではないか。このような観点から開催されたジョブフェアです。

ベトナム・ハノイの現地で感銘を受けたのは、就労希望者の目の輝きが、今の日本人のそれとは大きく異なっていることです。これから日本に行って就職すると、きっと素晴らしい未来が待っている、そのような期待を持ってジョブフェアに参加していることが、その言動や振る舞いから感じ取ることができました。それと同時に感じたことは、これからの日本の社会に、彼らを満足させられる輝く未来があるのだろうか、という一抹の不安感です。

ベトナムは町中の道路などのインフラ整備がまだ不十分で、交通マナーもあったものでは無く、クラクションを鳴らしながら走る、無数のオートバイや車の無謀運転がまかり通っています。バスは停留所で停止する前にドアを開け、動いているバスから乗客はとび降り、その動いているバスに乗客はとび乗って行きます。日本では絶対に見られない光景ですが、不思議に事故は起こりません。これは、貧弱なインフラで最大限の効率を得るための、一種の生活の知恵なのでしょう。とにかく国中が元気いっぱいで、半世紀前の日本と同じ、いやそれをしのぐ勢いを感じさせられます。

今の日本に欠けているもの、それは元気ではないかと思います。かつての日本には元気があり、新幹線、オリンピック、大阪万博と、立て続けに世界的なイベントを成功させてきました。今一度その時代の元気を取り戻して輝く日本を見てみたい、ベトナムからかえってきて、そのような思いがつのりました。ベトナムから元気な外国人が日本に来ることで、再び日本も元気になれるのかもしれない。それなら外国人労働者が増えるのは、日本にとってプラスになるのではないか。こんなことを考えながら、ベトナム・ハノイでのジョブフェアを振り返っています。

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マイクロソフト社のパソコン用基本ソフトウェア「Windows7」は、来年1月14日でサポート期限を迎えます。このサポート期間が終了するとウイルスやハッキングに対抗できなくなります。

パソコンが外部に乗っ取られる危険性が高まるので、それまでに「Windows10」へのアップグレードが必要です。

「Windows7」から「Windows10」へのアップグレードは、マイクロソフトによる期間限定のサービスとして無償で提供されました。そのサービス期限はかなり前に終了しているのですが、今でも、正規のライセンスで購入された「Windows7」は無償で「Windows10」にアップグレードすることが可能なようです。「Windows10」にアップデートをしておけば、これには無期限のサポートをマイクロソフトは表明していますので、安心してパソコンを使い続けることが可能です。これも、来年1月14日を過ぎると無償アップグレードは提供されなくなる可能性が高いので、「Windows7」をお使いの方は早急に対策することが望ましいと言えます。

アップグレードする前の注意点として、お使いのパソコンメーカーがその機種の「Windows10」での利用をサポートしているか、事前に確認する事が大切です。サポートしていない場合は、「Windows10」にアップグレードした後で、一部の機能が正常に動作しない不具合が生じる可能性があります。サポートしているかどうかは「(メーカー名)Windows10アップグレード対象」と入力してグーグル検索すれば、メーカーの対応情報が表示され簡単に知る事ができます。

サポート終了後のセキュリティが脆弱なパソコンが外部のハッカーに乗っ取られるのは非常に危険な状況で、ご自身のパソコンがウイルスの発信源となることがあります。しかも、乗っ取られたことをユーザー自身が知る事ができない、というのもウイルスの厄介なところです。ただ、一つ明確に表れる症状はパソコンの動作が大変遅くなることです。これはウイルスがバックグラウンドで動作するために、パソコン本来のパワーがウイルスに使われることで起こる現象です。

ともあれ、パソコン起動時に画面中央下に、一瞬「Windows7」と表示されるパソコンがあれば、早急に対応することが望まれます。来年1月14日がサポート期限であることをお忘れなく。

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10月からの経済対策として国が注力する、キャッシュレス・消費者還元事業が始まりました。しかし身の回りではその還元率として「2%、5%、10%」の数値が乱舞して、キャッシュレス決済における国の消費者還元制度がわかりにくくなっています。それが逆に消費者の混乱を招き、ひいてはキャッシュレス決済の進展に逆効果になっているようにも見受けられます。

国が決めた本来の趣旨は、中小企業が運営する店舗で消費者がキャッシュレス決済をした際に、支払額の5%を税金でポイント還元する制度です。ですから大企業が運営する店舗ではこの制度の対象外になります。ところがコンビニなどではフランチャイズ契約で運営される中小企業の店舗があるので、この場合は2%の還元をすることとなりました。まとめると大手の直営店では還元無し、大手のフランチャイズ店では2%還元、中小の地元店では5%還元となります。ところでコンビニには本部直営店と中小のフランチャイズ店が混在します。同一のブランド店間で還元に差が生じることは好ましくないので、コンビニ大手3社は直営店でも差額は本部負担で、全店一律2%還元としました。さらに2%はポイント還元ではなく即時値引きとしました。これが事前に二転三転したコンビニにおける還元制度の最終形です。

ここから話がややこしくなるのですが、昨年からサービスを開始したスマホQR決済事業者は、新規顧客獲得のため、政府の施策に上乗せする独自の還元制度を始めました。ソフトバンク系列のペイペイは5%還元対象店で決済すると、5%を上乗せして10%還元します。ただし、2%還元対象店での決済に上乗せはしませんのでコンビニでの決済は2%還元のままです。一方の楽天ペイは0%や2%還元の店での決済も含め、すべての店で5%還元します。整理すると中小の地元店で購入する場合は10%還元のペイペイ利用がお得で、大手チェーン店やコンビニで購入する場合は5%還元の楽天ペイ利用がお得となります。この他にも多数のQR決済事業者が乱立していますが、簡単に使い分けるにはQR決済は2社程度に絞るのが便利ではないかと思います。

ところで、クレジットカードは決済金額の3%から5%をカード会社が加盟店から徴収します。この手数料は最終的には価格に上乗せされるので、間接的に消費者の負担です。そのため来年6月まではこの手数料を3.25%以下にすることも、今回の制度に盛り込まれています。一方ペイペイは決済時の加盟店手数料を徴収しません。その理由については別の話として、クレジットカードとQR決済が併存する日本では、QR決済が今後主流になる可能性が高いと予想されます。これからは、店舗も消費者も早めにQR決済に慣れておいた方が良さそうです。

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10月からの経済対策として国が注力する、キャッシュレス・消費者還元事業が始まりました。しかし身の回りではその還元率として「2%、5%、10%」の数値が乱舞して、キャッシュレス決済における国の消費者還元制度がわかりにくくなっています。それが逆に消費者の混乱を招き、ひいてはキャッシュレス決済の進展に逆効果になっているようにも見受けられます。

国が決めた本来の趣旨は、中小企業が運営する店舗で消費者がキャッシュレス決済をした際に、支払額の5%を税金でポイント還元する制度です。ですから大企業が運営する店舗ではこの制度の対象外になります。ところがコンビニなどではフランチャイズ契約で運営される中小企業の店舗があるので、この場合は2%の還元をすることとなりました。まとめると大手の直営店では還元無し、大手のフランチャイズ店では2%還元、中小の地元店では5%還元となります。ところでコンビニには本部直営店と中小のフランチャイズ店が混在します。同一のブランド店間で還元に差が生じることは好ましくないので、コンビニ大手3社は直営店でも差額は本部負担で、全店一律2%還元としました。さらに2%はポイント還元ではなく即時値引きとしました。これが事前に二転三転したコンビニにおける還元制度の最終形です。

ここから話がややこしくなるのですが、昨年からサービスを開始したスマホQR決済事業者は、新規顧客獲得のため、政府の施策に上乗せする独自の還元制度を始めました。ソフトバンク系列のペイペイは5%還元対象店で決済すると、5%を上乗せして10%還元します。ただし、2%還元対象店での決済に上乗せはしませんのでコンビニでの決済は2%還元のままです。一方の楽天ペイは0%や2%還元の店での決済も含め、すべての店で5%還元します。整理すると中小の地元店で購入する場合は10%還元のペイペイ利用がお得で、大手チェーン店やコンビニで購入する場合は5%還元の楽天ペイ利用がお得となります。この他にも多数のQR決済事業者が乱立していますが、簡単に使い分けるにはQR決済は2社程度に絞るのが便利ではないかと思います。

ところで、クレジットカードは決済金額の3%から5%をカード会社が加盟店から徴収します。この手数料は最終的には価格に上乗せされるので、間接的に消費者の負担です。そのため来年6月まではこの手数料を3.25%以下にすることも、今回の制度に盛り込まれています。一方ペイペイは決済時の加盟店手数料を徴収しません。その理由については別の話として、クレジットカードとQR決済が併存する日本では、QR決済が今後主流になる可能性が高いと予想されます。これからは、店舗も消費者も早めにQR決済に慣れておいた方が良さそうです。

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9月23日秋分の日、海外進出支援業務をさせていただいている私のところに、ショッキングなニュースが飛び込んできました。英国の老舗旅行代理店「トーマスクック」が破産申請をしたのです。譲渡や再生による事業継続が見込まれる倒産ではなく、完全な破たんである破産申請でした。この会社が発行する旅行商品を使って国外に滞在中の旅行者数は15万人超であり、その人たちのすべてのツアーが同日付で無条件にキャンセルされる事態となりました。海外旅行の途中で手持ちの旅行券や航空券が紙くずになるという、旅行者にとってはまさに悪夢のような出来事です。英国政府は海外旅行中の自国民を無事に帰還させるために、専用のチャーター便を用意して2週間かけて輸送する帰国支援計画を発表しました。平時における自国民の帰還作戦としては過去最大規模、という異例の状況が発生しています。

トーマスクックは世界で最初の旅行代理店であり、その後全世界の旅行代理店がその経営手法をまねてきた、いわば旅行代理店のお手本となった老舗企業でした。トーマスクックのトラベラーズチェックを利用した経験をお持ちの方もあると思います。そして今、世界各国は好景気によって海外旅行ブームに沸いており、海外旅行者数は年々うなぎのぼりに増えています。このような追い風の状況の中で起こった経営破たんに、世界の旅行業界は大きなショックを受けています。一方で、このような事態は、起こるべくして起こったという指摘もあります。それはネット専業旅行代理店との競争激化による、ビジネス機会の変化です。

世界最大の旅行代理店は今ではネット企業に置き換えられています。そのトップに君臨するのが、ブッキングドットコムで知られるプライスラインであり、次点がマイクロソフトから分離独立したエクスペディアです。どちらも年間8兆円の売り上げを誇る巨大企業となり、トーマスクックの3倍以上の規模に成長しました。日本では10月から消費増税が実施されましたが、これによる増収効果は5.6兆円なので、ネット旅行代理店の売上規模がいかに大きいかがわかります。これらネット専業のライバル企業に、老舗旅行代理店のビジネスが根こそぎ持って行かれたのです。

1855年に世界初の海外旅行という商品を生み出し、1872年に世界一周旅行を発案し、1874年に世界初のトラベラーズチェックを作り出したかつての先進企業も、インターネット時代の変化にはついていけなかったのです。まるで平家物語の序文を地で行くようなストーリーですが、IT技術の進歩は世界最古の老舗旅行代理店も無残に叩きのめす、恐るべき時代の変化を引き起こしていることを改めて感じさせられました。

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