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3月30日に観光庁から発表された統計調査では、日本人旅行客の微減が継続し外国人旅行客の増加がそれをカバーするという傾向が、今回さらに浮き彫りとなりました。

外国人旅行客は新たな視点で日本の魅力を発見し、それが新たなビジネス創造に結び付く事例が数多くあります。 本コラム2月号では、訪日外国人旅行者が日本酒を飲んだことがきっかけとなって、海外における日本酒ブームを巻き起こしていることを書きました。そこで農水省では日本酒をフランスワインのような戦略商品として、海外輸出の目玉商品となるよう本腰を入れ始めています。そのためには、品質の良い酒造好適米が大量に必要となるため、農家には酒造好適米の生産にシフトするよう誘導するようです。また元サッカー選手の中田英寿さんは、海外のレストランでの日本酒の保存状態が良くないので、日本酒を美味しく飲むための日本酒セラーの開発を、日本企業と一緒に進めているそうです。こうなると外国人旅行者の増加はいわゆる観光業だけでなく、農業や製造業まで含めた広範囲の業種に、新たなビジネス機会をもたらすことが期待されます。

 

一方で外国人旅行者による影の部分も大きくなっています。外国人旅行客が著しく増加している京都の観光拠点では、着物を着た若い女性が闊歩しています。ところがその着物は京都製ではなく中国製で、着物をレンタルする業者も中国人、支払いはアリペイなどの中国版モバイル決済です。また羽田空港国際線にずらっと並ぶ自家用車は観光白タクで、ここでも中国人ドライバーが中国人旅行客を乗せて都内観光に連れ出し、支払いはやはりアリペイで車内決済だそうです。これでは、日本は軒先を貸すだけで実入りの無い観光地となり、地域振興にもならない危険性があります。外国人旅行者のニーズは中国人を始めとする外国勢がよく理解しており、日本人起業家は一歩出遅れている感があります。

外国人旅行者による国内旅行消費額は、日本の国家予算の9%に近い年間5兆円です。政府目標の2020年に4千万人が来日すれば金額は8兆円になります。これをうまく日本企業が自社の発展に取り込むことができれば、国民経済は大きな繁栄を享受できるはずです。そのためには、より多くの日本企業が外国人対応ビジネスのやり方を学ぶ必要がありそうです。

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