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1953年に始まってから半世紀以上に渡ってマスメディアの中心に君臨してきたテレビ放送が、5Gの登場によっていよいよ終焉を迎える可能性が見えてきました。5Gは先月にも本コラムで取り上げた次世代モバイル通信規格の名称で、1ギガビット毎秒の通信速度が得られる携帯通信技術です。5Gではスマホを端末装置としてテレビにつなぐだけで、すべてのテレビ放送を見ることができ、衛星放送やケーブルテレビはもちろん、地上波放送も不要になります。

かつて携帯電話が隆盛だったころ、地上波放送を携帯で見ることができる日本独自のワンセグ放送が始まりましたが、その後のiPhoneに始まるスマホの普及で、携帯によるテレビ視聴は下火になりました。この時のワンセグはあくまで地上波を使った技術でありネットは使っていませんでした。これに対して5Gはネットでテレビ放送を受信するものでワンセグとは異なります。5Gはテレビ放送を外出先ではスマホで見ることができ、自宅ではスマホをテレビにつないで見ることができるので、ケーブルや電波という媒体そのものが不要になります。今でもテレビの視聴を有線のインターネットのオプションで契約している家庭もありますが、これは利用者から見ればケーブルテレビと同じようなコストと手間がかかり、あまり魅力的とは言えません。しかし5Gではスマホさえあれば設備不要、工事不要、移動自由なので、利用者には大きな魅力です。

ただしテレビの地上波放送には大きな利権が絡んでいるので、これが政治的圧力となって技術の進展を阻む要因になることは容易に想像できます。実は今でもテレビ放送をスマホで見ることは技術的に可能なのですが利権が絡むために、過去に放送済みの番組をオンデマンドで見る状態にとどまっています。しかし5Gで世界に後れを取らないためには、テレビ放送のインターネットへの開放は避けて通れないものと考えられます。

ドコモが開発したiモードも、地上波デジタルのワンセグ放送も、日本が世界に先駆けて開発した技術はどれもガラパゴス化して長続きしませんでした。5Gでは利権による縛りをできる限り排除し、誰もが便利に使えて世界に通用する、共通規格を打ち立ててもらいたいものだと思います。液晶テレビ