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アメリカ向けに日本酒の輸出量がここ数年急増しています。何が原因なのかはわかりませんが、日本酒を飲むアメリカ人は確実に増加しているようです。20年以上に渡って生産量が減り続けている日本酒が、海外の市場に向けて大きく輸出が拡大するなら、疲弊している酒蔵と価格競争力が乏しい国内の米作りにおいて、将来の大きな展望が開けてきます。アメリカ国内で日本酒が多く飲まれているのは、東海岸のニューヨークと西海岸のロサンゼルスが、2大中心地だということです。今回はロサンゼルスの日本酒事情を調査してきました。

結論から言うと、期待していたほど日本酒がアメリカ人家庭に普及している様子は無く、すし店等で提供される日本酒がアメリカでの飲み方の主流のようです。ワインのように自分で銘柄を選んで購入して自宅で飲む人はまれなようです。しかしお店が選んだ日本酒を飲む受け身の姿勢では、銘柄の味の違いに関心は薄くなりがちです。そしてこれは日本酒離れを起こした日本の状況と同じであり、このまま推移するとアメリカでも同じように日本酒離れを引き起こす危険性があります。日本酒をアメリカ人家庭でワインのように普及させるためには、日本とは異なるやり方で日本酒を取り扱う必要があるようです。

そこで、ロサンゼルスのアメリカ人家庭に日本酒をぶら下げて乗り込みました。自宅の庭で提供されたバーベキューの肉をほおばりながら、持参した日本酒をグラスに注いで、相手と一緒に飲みます。ところが返ってきた答えは、「うーん? ワインはもっとフルーティだ」とのこと。その後相手が持って来たのは、なんとコストコの冷凍ブルーベリー。数個のブルーベリーを日本酒グラスに放り込むと「うまくなった!」と言って、ブルーベリーをこちらのグラスにも入れてくれました。これを飲んでみると確かにフルーティでうまい。しかも面白いことに、どの日本酒も平等にうまくなるのではなく、やはり純米大吟醸の高級酒の方がうまい酒になります。これは予想もしなかった展開であり、新たな発見でした。

これまでの日本酒の常識にとらわれないで、相手が旨いと思う飲み方を提案し、結果が良ければ広く情報発信する。このような斬新な取り組みが、自宅で飲むワインを日本酒に置き換えることにつながり、やがて大きな市場へと変貌する可能性が考えられます。アメリカでの日本酒はうまい! こう言わせるアイデアがまだまだ不足しています。そしてそこに海外での日本酒が大きく開花するヒントがあるように思われます。アメリカの日本酒