今年の7月11日に総務省は「ICTインフラ地域展開戦略検討会 最終とりまとめ案」を公表しました。注目されるのは5Gの活用による社会の大きな変化です。5Gとは第5世代のモバイル通信規格の名前で、現在より100倍速い通信速度が得られる技術であり、早ければ2020年からの実用化が計画されています。

1990年から始まった初期の携帯電話は2Gで、音声通信の機能だけでした。これが2000年頃から3Gになり、当時「写メール」と呼ばれた写真を撮って送れる携帯電話が流行しました。その後2010年頃から現在の4Gになり、どこでも動画が視聴できるスマホとして現在に至っています。これがさらに高速になって何に使うのかというと、注目されているのが車の自動運転です。現在の4Gでスマホの動画を見ていると、映像が時折止まることを経験したことがありますね。これは通信が錯綜した時に起こる現象です。もしこれが自動運転中に発生すると、大変危険な状態となります。5Gなら多数の車が一斉に自動運転していても、安全に誘導されるようになり、完全自動運転社会が現実のものとなってきます。完全自動運転が実現すれば車は自分のいる場所に勝手に来るので、駐車場まで行く必要が無くなります。これにカーシェアが組み合わされれば、高齢者も安心して移動ができる、優しい社会が創出されると予想されます。

良いことずくめの5Gによる自動運転車ですが、日本経済全体を眺めると、大きなリスクが潜んでいます。完全自動運転に必要と考えられる一般道の情報は、グーグルマップやストリートビューなどを展開するグーグル1社が独占しています。自動運転車を製造できる企業は日本以外にも世界に数多く存在しますが、自動運転の頭脳部分は世界でグーグル1社しか製造できなくなるかもしれません。そうなるとすべての自動車メーカーはグーグルの下請け企業という位置づけになります。いやさらに可能性が高い将来像は、現在のアップルiPhoneに見られるように、米国で設計を行って中国で組み立てをするという、国際分業体制です。そうなると、日本の自動車産業も日本の家電メーカーが辿った道を歩むことになりかねません。

大きな社会変化を巻き起こす可能性のある5Gですが、その未来にはバラ色の世界とイバラの道の両方が待っているようです。未来は先端技術で発展する、輝かしい日本であることを信じたいと思います。

Category: 社長ブログ
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