4月26日の東京高裁判決で、医薬品のネット販売が認められる判決が言い渡されました。この判決では、ネット販売が急増している現代社会で既得権者を保護する裁量行政に、司法から警告が発せられました。

今回の裁判の原告であるケンコーコムは2004年から医薬品のネット販売を開始し、その後ネット販売大手から地方の薬局薬店もこれに参入し、医薬品のネット販売は拡大を続けました。この状況に危機感を持ったドラッグストア協会と日本薬剤師会は、「医薬品のネット販売は重篤な健康障害を引き起こす危険性がある」として、医薬品のネット販売を禁じるよう厚労省に働きかけました。これを受けた厚労省は改正薬事法の2009年施行に合わせて、医薬品のネット販売を禁じる省令を出しました。収益柱に育った医薬品のネット販売を禁じられたケンコーコムとウェルネットは、ネット販売の解禁を求めて東京地裁に提訴しましたが、2010年の地裁判決では「医薬品のネット販売は副作用の危険性がある」との理由で敗訴しました。

clip_image001ケンコーコムは東京高裁に控訴するとともに民主党に働きかけて、行政刷新会議での国の規制を検討する規制仕分けに、医薬品のネット販売を盛り込ませました。「国による医薬品のネット販売規制は妥当か?」この論点で争われた控訴審では、「ネット販売による副作用発生報告は皆無である」現状から、原告の訴えが認められました。風邪薬や胃腸薬を購入する際に薬剤師に相談する客はいないのが実態で、厚労省が主張する対面販売とネット販売の安全性の違いは、一般の国民感情に一致しないものと言えます。へき地や離島で医薬品のネット購入に頼っていた住民、対面販売で自分の薬名を知られたくない人々などに、今回の判決は朗報となりました。

さらに判決では「改正薬事法にネット販売を禁止する規定は無く、省令でこれを禁止するのは裁量行政の行き過ぎである」と警告しました。これは、既得権者の意向に官庁が引きずられ、法に定めていない規制を省庁が勝手に作るこれまでの慣例に、司法が警告を発したという点で画期的な判決です。

町の書店、CDショップ、写真屋、証券会社など、ネット販売の台頭によって存続できなくなった業種は数多くあります。このような時の流れに抗うのに、既得権者が国の規制を手段として使うことの問題点を、今回の判決は浮き彫りにしました。逆に胸をなでおろしているのは、ネット販売を強化してきた地方の薬局や薬店です。彼らはドラッグストアの進出による経営危機に、ネット販売を拡大させて生き延びてきたのです。ネット販売が急速に拡大する現代、この時の流れを取り込むか、取り残されるかが、ビジネスの成否を決める時代に入ってきたようです。

Category: 社長ブログ
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