この10月5日からマイナンバー制度が施行されました。国民が共通番号で管理されることに、戸惑いや不安の声が聞かれ、それに向けたセミナーの案内も見られるようになってきました。このマイナンバー制度については、憶測による誤解も少なくないようなので、技術的観点からまとめてみたいと思います。
来年2016年1月からは社会保険料や税金の納付に、マイナンバーの記載が義務付けられます。そのため給与や外注費を支払っている企業や個人事業主は、マイナンバーの管理が必要となります。管理者には安全管理義務が定められており、故意にマイナンバーを流出させると、4年以下の懲役又は200万円以下の罰金という重い罰則が定められています。しかし、故意でなくてもマイナンバーを流出させると、社会的信用を損なうことになります。ですからマイナンバーを取り扱うパソコンからは、情報を流出させない安全対策をとることが大切です。既にマイナンバー対策ソフトや、専用のシステムが市販されていますが、中小企業や個人事業種にとってはこれらの導入は、経営上の負担となります。マイナンバー制度の安全対策は費用負担のかかる対策でなくとも、正しいセキュリティ対策を施せば良いと考えられます。
情報流出に対する求められる対策は、次の3点となります。①マイナンバーにアクセスできるパソコンは起動時のパスワードをかけておくこと、②利用するパソコンには正しいセキュリティ対策を施しておくこと、③外部に情報を発信する際にはファイルにパスワードをかけておくことです。これらの安全対策には多少の知識と設定作業が必要ですが、特別な費用はかかりません。しかもこれらの安全対策はマイナンバー固有のものではなく、本来やるべき安全対策が改めて求められているものと考えることもできます。その意味では、マイナンバーの導入は企業の情報安全対策を見直す良い機会と言えるかもしれません。
ところで働く側の人が注意しなければならないことは、収入の道が二つ以上ある人です。例えば、社員として働いている人がアルバイトなどをしている場合、これまではアルバイト収入を申告しなくても、よほど大きな収入でなければ発覚することはありませんでした。しかしマイナンバーが導入されると、アルバイト給与の支払いにもマイナンバーが使われるため、税務署は簡単に名寄せができるようになります。副収入のある人は正しい税務申告をすることが大切です。また、株式投資などで利益を得て申告をしていない場合も、マイナンバーで税務署は把握が簡単になるので、正しい申告をする必要があります。しかしマイナンバーで大きな影響を受けるのは一部の富裕層で、一般人が大きな損失をこうむる事はあまり考えられません。雇用する側も働く側も、やるべきことがきちんと出来ているか、チェックする機会でもあります。
マイナンバー導入はインパクトの強い政策であり、それが有効に機能するか有害なものになるかは、運用する行政側の理念にもよります。この制度がより良い明日を作る原動力になってほしいものです。

Category: 社長ブログ
You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. Both comments and pings are currently closed.

Comments are closed.