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一時大きな話題をさらったEV(電気自動車)についての報道が、このところあまり聞かなくなりました。航続距離が短いことと充電に数十分かかる問題を解決する技術的ブレークスルーが、今のところ見出せないためのようです。EVがもたついている間に、FCV(燃料電池車)が技術面やコスト面で追い上げてきて、本格的な普及へのカウントダウンが始まりました。

燃料電池とは水素と酸素を触媒で反応させて電気を起こすものです。水の中に入れた電極に電圧をかけて水素と酸素を発生させる、いわゆる水の電気分解を逆に反応させるのです。FCVはこの燃料電池を電源としてモーターで走る電気自動車です。燃料の水素は反応後には水になり、地球温暖化の原因となる排ガスを一切出さない「究極のエコカー」と言われています。しかも車に搭載するタンクに水素ガスをフルに充てんする時間は約3分間、1回の航続距離は500~800㎞と、ガソリン車と遜色のない性能です。

FCVの開発は実はかなり以前から手がけられているもので、実用化へ向けた技術はすでに完成しています。2005年に愛知で開催された「愛・地球博」では、瀬戸会場と長久手会場を結ぶシャトルバスにFCVが使われていたのを記憶されている方もいらっしゃるでしょう。FCVの大きな問題は燃料電池の製造コストにあり、2005年頃のFCVは1億円近い価格になると言われていました。しかしこの問題も近年の技術進歩で、急速に改善が進んできました。トヨタとホンダは2015年にも量産車の発売を計画しており、その価格は500万円前後で市販化される見通しです。また韓国の現代自動車は、今年2月にFCVのパイロットラインを建設しており、PRのためのプレ量産車を欧米に提供することを計画しています。

EVは電池とモーターがあれば動力装置が完成するので、各部材の技術的なすり合せをあまり必要とせず、新興国でも簡単に製造できるところがパソコンや液晶テレビと類似しています。そのためEVは実用化されると、製造コストの安いアジア諸国の競争力が強いと見られています。一方でFCVは燃料電池周りに複雑なすり合わせ技術を必要とします。またFCVはハイブリッドカーの技術をベースとしており、この分野で先を行く日本企業に優位性があると見られています。いち早く日本国内で普及させることが出来れば、日本がFCVで世界をリードすることも夢ではなさそうです。そのために必要なことは、燃料電池のさらに一段踏み込んだ低コスト化と、水素ステーションの全国的な整備です。

燃料となる水素は製造工程に化石燃料を使わない方法もあるので、石油資源に乏しい我が国には資源問題の側面からも水素利用の進展は望ましいものです。すり合わせ技術、地球環境、資源問題など多くの観点から日本に有利と見られるFCVは、日本が世界に誇れる先進技術の証として、早期の普及実現に期待したいものです。

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