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前回のブログに引続き、節電対策に対する疑問です。

今年大手企業に広まる「サマータイム制」。1時間早く出勤して朝の冷房負荷を減らすと共に、電力消費のピークシフトを目的とした対策です。

しかし「サマータイム制」とは本来、夏場に国全体で時計を1時間早めることで日没を1時間遅らせ、夜の照明に使われる電力を節約する目的で考案されたものです。欧米諸国では今も実際に行われています。

「サマータイム」への切り替えは、体感的に日没が1時間遅くなるだけで早起きや夜更かしをしている感覚はありませんが、街角の照明は1時間遅く点灯するので電力消費量は確実に減ります。

しかし今夏企業が独自に導入する「サマータイム制」では街角の照明点灯時刻は変わらないので、節電効果は乏しいものです。

合わせてピークシフトについてもこの対策では効果の無いことが、独立行政法人産業技術総合研究所による研究報告で明らかにされています。

結局これは社員に早起きを強制するだけで、節電やピークシフトの効果は得られない対策と考えられます。

節電やピークシフトには、何が有効で何が間違っているのか、このような国民的なテーマにこそ、政府は専門家を集めて正しい方策を出すべきです。

国全体でのサマータイム制導入などは、本来今年の夏こそ導入すべきだった大切なテーマであったと考えられ、時機を逃してしまったことが残念です。

政治的判断の遅れは、このような問題にも現れています。

(産技研報告:http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20110621/nr20110621.html

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今年の夏は節電と電力消費のピークシフトが、企業と国民に与えられたキーワードとなっています。これは大切なテーマですが、直感的に考え出された対策には間違いもあるようです。

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多くのビルでは省エネのために一部のエレベータを運転休止しています。この間引き運転の効果に疑問が呈されています。

この対策では休止しているエレベータの消費電力は減少しますが、利用者の数が変わらないとすると、動いているエレベータの稼働率が上昇するので、こちらの消費電力は増加します。

同じカゴに客が相乗りした場合の消費電力減少は期待できますが、どの程度の効果があるのでしょうか?

この問題について財団法人電力中央研究所が実際のビルで実証試験をしました。

その結果、間引き運転しても電力使用量に大きな変化は見られませんでした。 その一方でエレベータの待ち時間が大幅に増大するという結果が得られました。

この現象は利用率の高いシステムで処理能力を落とすと、待ち時間が指数関数的に増大するという「待ち行列理論」で説明される現象です。

すなわちエレベータの間引き運転は節電効果が少ないのに待ち時間を大きく増加させるという、国民経済的には逆効果となる間違った対策だと言えます。

エレベータの待ち時間に費やされる時間が増加することは、貴重な労働時間がロスタイムに変わることを意味します。

全国民レベルでは相当量の労働時間が失われることになり、誰もが気付かない間に、これがGDPを大きく毀損する結果を招きます。

このような問題に政府は目を瞑っていていいものか、疑問を感じます。

(電力中央研究所報告:http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/leaflet/R08004.pdf

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7月に入ってから、電力使用量が平日の金曜日に昨年より下回り、土日の使用量が上回ったようです。これは、自動車業界が工場の稼動を、木金休みで土日稼動に変えて、電力需給の平準化に努めた成果と見られます。

また、東北地方では被災工場の復旧が土日返上で進められた結果、当初予想を上回るスピードで復旧し、生産が始まっているようです。

いずれも多くの人々の努力に頭が下がりますが、一方で政府は何をやってくれたのか、成果が見えてきません。

浜岡原発を止めたことくらいしか頭に残っていませんが、これは正しい判断なのかどうか、今も疑問の残るところです。

サマータイム制導入などは、省エネルギーに大きな効果のあるものでありながら、大きな財源も必要としないもので、まさに今なら多くの国民の理解も得られたであろう政策ですが、これも民間任せの傍観姿勢に終わりました。

日本経済が瀕死の重傷を負っているのに、民主党は今なお政局に明け暮れています。日本の将来に向けて知恵を絞るべき政治家がいないことは、悩ましい事態です。

政府をあてにせず努力を求められる日本の時代は、まだ続きそうです。

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