調査会社IDCジャパンの発表によると今年4~6月の国内パソコン出荷台数は、個人向け29%減少に対して法人向け7%増加で、合計では12%の減少と伝えられています。個人向けパソコンが減少した理由にはタブレットへの移行が原因と結論付けられていますが、本当にそれだけが原因でしょうか? 今の個人向けパソコンはメーカーの思惑でユーザーニーズから離れたモデルを作り続けているように感じられます。

パソコンのディスプレイはかつてNECの横長ワイド画面でしたが、文書作成がしやすいからと、IBMの正方形に近い縦横比に1992年頃から変わってきました。ところが今は再び横長ワイド型になっています。従来の縦横比ではテレビの映像が欠けるのでワイドになったのですが、どれだけの人がパソコンでテレビを見ているのでしょうか? また、Windows8はタッチパネルを意識して指で操作できるようになりましたが、逆に操作はしづらくなった印象があります。こちらもパソコンの操作を指でやる人がどれだけいるのでしょうか? これらの仕様変更はユーザーニーズを汲み上げて行ったものではなく「他社がテレビ機能を搭載したから自社でも…」「指で操作できたらタブレットユーザーを取り戻せるのでは」などなど、メーカーの思惑で開発されたもののように感じられます。現実に、ユーザの要求に合わせて作る法人向けにモデルでは、ほとんどが正方形ディスプレイをセットしWindows7を導入して出荷されているのが現状なのです。こうしてみると法人向けパソコンの出荷が増えたのはニーズに合わせたから、個人向けパソコンの出荷が減少したのはそれを無視したから、という見方も出来なくありません。

1995年に提唱されたマルチメディアパソコンは、みごとに一過性のブームで去っていきました。その後もパソコンでテレビを見せるしかけは、これまで何度も試され毎回頓挫してきました。結局テレビはテレビ、パソコンはパソコン、そのシンプルな棲み分けがユーザーニーズに合っているようです。複数の機能を組み合わせることがイノベーションの第一歩なのですが、テレビだけはどうやら機能の組み合わせには向かない機器なのかもしれません。あるいは人は元来シンプルなものを好む存在なのかもしれません。

そう言えば一時話題となっていた携帯電話のワンセグテレビも、見ている人を見かけなくなりましたね。

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Category: 社長ブログ
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