関西電力大飯原発の再稼働の是非について、政界も世論も二つに分かれています。電力の安定供給を望む産業界は再稼働を要請する一方、安全性に疑問を持つ市民には反対する声が多いようです。3.11大震災で福島原発が事故を起こしてから、原発については様々な議論が展開されています。しかし気になるのは、マスコミなどで報道される議論の的は、意図的なのかどうか、問題の本質を外していることです。

今原発の再稼働の議論は、この夏の電力供給不足の問題と、原発の地震に対する安全性の、二つに焦点を絞っています。これらはいずれも大きな問題であることは確かです。しかし、原発を停止することによる経済的損失は、今の主要な議論に上がっていませんが、これは考えなくても良いのでしょうか?

昨年5月6日に発せられた管首相の要請で、正常運転中の中電浜岡原発4・5号機は、突如運転を停止しました。そのため中電は火力発電で不足分を補うことを余儀なくされ、発電用燃料費の増加により、24年3月期の決算見通しは△376億円の営業損失となりました。昨年度の営業利益1742億円から一気に2118億円もの出費増です。この要因のすべてが燃料費では無いとしても、相当程度の燃料費負担増加と見られます。国内で最も原発依存率の低い中部電力でこれだけの出費増ですから、原発停止による日本全体での燃料費支出増は数兆円の規模になることは容易に推測できます。これが単年度ではなく少なくとも10年以上は続きますから、産油国へ流出する国富は数十兆円になると考えられます。これは、電力料金値上げや国庫の赤字積み上げという形を経ていずれは国民負担となり、相当の国民経済の混乱や貧困の増大を招くことが予想されます。

原発再稼働の是非を問う前に、原発の経済的諸問題と安全性の諸問題、すべての詳細な情報を開示した上で国民の声を聞き、それを国の判断基準とするべきです。ところが肝心の情報開示をせずに、経済性と安全性のどちらを重視するのか、という定性論に走っています。そして政治家は次の選挙で票を無くすのを恐れ、自分は安全性重視論者であるかのように振る舞っています。真実を言うのを恐れる政治家の説明では、明確な方向性が見えません。

政権にある政治家は肝を据えて、原発再稼働をやめた場合の経済的損失と、再稼働した場合のリスクを詳しく正確に公表し、真摯に国民の声を聞くべきではないでしょうか?

Category: 社長ブログ
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