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9月11日に開かれた第15回経済財政諮問会議の席上で、安倍晋三首相が突然切り出した「携帯電話料金が家計負担の大きな課題である。総務省が見直しを検討するように」との鶴の一声で、携帯業界は大騒動となりました。その後の諮問会議では、携帯会社が高額の電話機を0円で赤字販売しているツケを、長期利用者が払わされている構造が月額料金を高くしている原因だ、として電話機の0円販売を禁止する通達を総務省が出すことになりました。
携帯料金を安くするための議論が、いつの間にか電話機の価格を高くする議論にすり替わっていることには、いささか疑問を感じます。そもそも電話機の0円販売は赤字なのでしょうか? 最も価格が安い時期にあらゆる割引を付けて他社から乗換え契約すると、電話機代0円かつ月額料金2,000円でアップルのiPhone6を契約することも可能でした。それでも2年縛りの契約なので通算48,000円、契約料も加えると合計51,000円の支出は余儀なくされます。iPhone6の定価は74,800円と高額ですが、携帯会社がAppleから仕入れる価格は恐らく51,000円以下、そこから逆算して電話機の0円販売が可能なのだと考えられます。電話機の0円販売は赤字商売ではなく、携帯会社はしたたかに利益を上げているはずです。そうなると総務省が指摘するように、電話機の0円販売を禁止すれば携帯会社の赤字が減って月額料金引き下げにつながる、という流れには疑問が残ります。そもそも会議に参加させられた携帯会社のトップ達は、電話機の赤字販売という言葉を一言も口にしていません。電話機の0円販売で利益を出していたのであれば、この販売方法を禁止することは携帯会社の収益を悪化させて、逆に料金値下げの余地が小さくなる可能性があります。利用者に不平等が生じているとの議論も出ていますが、0円携帯電話の契約の自由は誰にも保障されているので、これは利用者の選択であり販売方法の問題とは言えません。
かつてこの業界に関わっていた筆者の目から見て、携帯電話の販売方法はあらゆる知恵を動員して作り出された芸術作品のようにすら見える高度な技で出来ています。これが日本の携帯電話を短期間に発展させて、世界トップクラスの品質(3G人口カバー率100%)を、世界平均を下回る料金(スマホ6400円、ガラケー1800円)で提供できている原動力になったものと考えられます。それに対して諮問会議に参加した面々は、一般消費者同様に0円販売のトリックにかけられたのかもしれません。毎回の専門部会の報告を見る限り、商売の素人集団による本質を外した議論が続いているようです。
各界の有識者を集めた経済財政諮問会議は、国の将来を左右する大所高所からの経済運営のあり方を議論する場のはずですが、その重要な場において携帯電話の0円販売を社会問題ととらえて論議をしている様は、情けないというより滑稽に感じられます。
ともあれ、そろそろ携帯電話機を新しくしたい、と考えている皆様、年明けからは料金プランに若干の値下げ(に見える)料金プランが出てきても、乗り換えによる「携帯0円!」ポスターは、しばらくお目にかかれなくなるかもしれません。買い替え検討中の方はお急ぎを。

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