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先月のコラムでもご案内したとおり、マイクロソフトの最新版OSとなるウインドウズ10が、さる7月29日にリリースされました。ところが、これまでのウインドウズのリリース時とは異なり、カウントダウンイベントは無くなり、静かな幕開けとなりました。ウインドウズ10には、スタートボタンの復活やデスクトップにおけるスマホアプリの動作改善などがありますが、最も大きな変化はこれが最後のウインドウズになることです。
これまでマイクロソフトは数年毎にウインドウズやオフィスのバージョンアップを行い、その販売収入がビジネスの根幹となっていました。IT業界もウインドウズのバージョンアップサイクルに乗って、新製品への買い替え需要で成長してきました。しかし今回のウインドウズ10を最後に、マイクロソフトはその後の後継ウインドウズは出さないと表明しています。ウインドウズのバージョンアップビジネスモデルが終焉したことを表しており、ITビジネスのパラダイムシフトが起こった瞬間と言えます。
ウインドウズ95の発売から20年、インターネットの進化も背景にITビジネスは驚異的な進歩を遂げてきました。ところが残念なことにこの期間はちょうど日本の大きな景気低迷期と重なっており、世界の大きな潮流から遠ざかった文化に浸っていました。激安や価格破壊などのキーワードでデフレと低金利が続く中、先進各国のインフレと高金利に国内の資金が吸い上げられ、前向きな技術開発に大きく遅れをとった結果が、日本の代表的なIT産業の壊滅的な状況を招くこととなりました。ようやく日本のIT産業もインフレ政策で前向きに進もうとしたところで、ビジネス環境のパラダイムシフトに遭遇するとは皮肉な巡り会わせです。
しかし環境の変化は既存ビジネスにとってピンチであると共にチャンスにもなります。過去の成功体験にとらわれず、一から新たなビジネスモデルを作り出すことで次のチャンスをつかむ、今回のマイクロソフトの方針転換にはそのような決意が感じられます。歴史ある大手電気メーカーが赤字決算や粉飾決算で揺れている中、これまで見向きもされてこなかった町のベンチャー企業が、次世代のビジネスを切り開く事例が次々と出てきています。マイクロソフト最後のウインドウズ10が、日本の歴史を再び変えるきっかけになるのかもしれません。

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