先日東京ビッグサイトで開催された展示会で、グーグル日本代表の講演を聞く機会がありました。今ではパソコンやスマートフォンでの検索で、使わない日はほとんどないほど身近になったグーグルですが、彼らの理念と戦略は単なる検索エンジンの提供にとどまりません。 グーグルマップをどんどん拡大していくと、地図から風景写真に切り替わるグーグルストリートビューは、既にお馴染みの方も多いことでしょう。自宅の洗濯物が写っていたとして、訴訟になる事例も世界各地で発生しています。それでも多額の費用をかけて、全世界の道路からの風景を撮影して、それを無料で提供するグーグルの意図はどこにあるのでしょう。そのヒントとなるのがグーグルの理念です。グーグルには一つの大きな理念があります。それは、世界中に存在するあらゆるすべての情報を正しく整理して、それを誰でも見ることができる未来社会の創造です。 あなたは今日一日どこで何を考え何をしていたのか、これは電話の通話先、パソコンやスマートフォンからのアクセス、フェイスブックなどSNSへの記事や写真の投稿、ETCを通過する車の利用データ、道路に設置されたカメラに映る車のナンバー、改札口を通る定期券の利用データ、街中の防犯カメラに映る顔写真、これらの情報を整理分析することで、かなり正確にわかるものなのです。警察の犯罪捜査などでは実際に、これらの情報分析が使われているようです。一方これらの情報を統計的に分析することで、新商品の販売や集客に大きな効果をもたらします。しかし、これらの情報はばらばらに記録されているので、それらを統合して分析するには、人手による多大な労力を要します。このような情報は「ビッグデータ」と呼ばれます。 「ビッグデータ」を処理するには巨額の情報投資を必要とするので、これを利用できるのは巨大企業に限られています。それをグーグルは2017年までに、誰でも使えるようにするというのです。これまでのように、「ビッグデータ」をダウンロードしてコンピュータで処理しようとすると、巨大なシステムが必要となります。しかし「ビッグデータ」をクラウド上に置いたまま、グーグルのクラウドシステムで集計や分析を行い、得られた結果のみをダウンロードすれば、パソコン1台で「ビッグデータ」が処理できるというのです。グーグルが提供するクラウド上のスプレッドシートは縦横ほぼ無限大の行列を提供するので、数億個からなる膨大な「ビッグデータ」でもスプレッドシートに読み込めます。そして、単純な数式を与えるだけで「ビッグデータ」の統計処理ができるのです。巨額の情報投資や情報処理専門家は不要ということです。 これからのビジネスに不可欠となるのは、情報部門ではなくマーケティング部門であり、全組織を束ねる強力なマーケティング部門を持つ組織が、次の世代の勝者になると予言していました。全世界の全データを掌握して誰にでも提供する、グーグルの壮大な理念がいよいよ現実味を帯びてきたようです。 |