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最近マスコミの話題となっている量子コンピュータとは?

 「量子コンピュータ」という言葉をお聞きになったことはありますか? 我々が普段使っているコンピュータは「ノイマン型」と呼ばれもので、すべての計算はメモリー上に一列に並べられて、順番に沿って処理する計算方法です。過去半世紀で計算速度は飛躍的に向上しましたが、計算方法はあくまで一列での順番が基本です。これに対して、「量子の重ね合わせ効果」という現象を利用して同時並列に計算を進めようと考案されたものが「量子コンピュータ」です。
 「量子」とは電子や原子、光子やそれよりさらに小さい素粒子まで含む、それ自身が粒子としての性質と波としての性質を両方持つ物質の総称です。普段我々が目にする物質とは性質が異なり、ニュートン力学の常識が通用しない、量子力学の世界になります。そこでは複数の状態が同時並行的に進行する特殊な状態が生まれます。この性質を利用して、コンピュータ上での演算を一列ではなく並列で行うことができるのが「量子コンピュータ」となるのです。
 現在の「ノイマン型コンピュータ」は、一列の計算処理を振り分ける作業がボトルネックになりつつありますが、これを根底から覆すのが「量子コンピュータ」と考えられています。その実用化は未来の話と思われていたのですが、2017年5月にIBMが商用向けの量子コンピュータのプロトタイプを構築する新たなロードマップを公表し、同年11月からクラウド上での商用利用の提供を始めたことで、世界の技術者を震撼させました。そして今年、中国が量子コンピュータ開発で世界をリードすると発表し、「量子コンピュータ」の国家間競争の火ぶたが切られました。今後の開発状況によっては国家の技術力格差を生み出す一大イノベーションになる可能性があります。
 実は筆者はかつて物理の学生だったころ、量子力学上の固有値を求める波動関数を計算することが苦手で、今でもトラウマが残っているのですが、コンピュータの世界で再会するとは思っていませんでした。しかし、「量子コンピュータ」の発達で素粒子物理学や宇宙物理学、グローバル気象解析、新薬やワクチンの開発などが加速すれば、われわれに新たな幸せをもたらしてくれるのではないか、このように考えて、明るい未来に期待を持ちたいと思っています。